紙の辞書について


学生の頃から紙の辞書が好きで古い版もなかなか処分できずに、ついつい本棚にたまっていきます。コレクターとまではいきませんが、一般に所有しているであろう数よりは少し多めに持っていると思います。国語辞典、英和辞典、漢和、古語、英英、仏語...、その大きさもハンディな小型版から机上版まで様々。今回はそんな紙の辞書の普段の使い方と収納についてまとめてみます。

現在の紙の辞書の世界


まず、そもそも紙の辞書を使わない方が大多数と思うので少しだけ紹介。


今年1月に岩波書店から広辞苑の新版となる第七版が発売され、各メディアで話題となりました。今の時代、いわゆる「紙の辞書」がここまで取り上げられることは珍しく、やはり「辞書といえば広辞苑」というブランドネームによるところが大きいのでしょう。

また、少し前の2012年頃、国語辞典編纂の舞台を描いた三浦しをんさんの小説などでもスポットライトが当たり注目されました。しかし、紙の辞書の需要は年々減少傾向で、改訂されなくなった辞書も少なくありません。スマホの普及、無料で利用できるオンラインの辞書サイトも存在するので仕方ないことだと思います。


ただし、そんな紙の辞書の世界でも特色をもった製品が登場しています。少し前でふれた広辞苑新版の執筆者にも名を連ねたサンキュータツオさんが解説する一連の動画はとても分かりやすく、小学生用から大人用まで幅広く紹介されています。私もこの動画を見て一冊購入しました。

使いやすさを重視して辞書の箱とカバーは捨てる

辞書の外箱は、断固捨ててしまいます。この外箱は、主として流通上の必要からつけてあるものですが、辞書を引く時には、いちいち箱から出していては能率が落ちます。美しいデザインの外箱でも、涙をのんで捨てます。
 表紙のビニールカバーは、汚れを防ぐためのものですが、やはり捨てたほうがいいと思います。表紙を支える指がすべって引きにくいし、音がくしゃくしゃうるさいからです。
第25回 辞書を買ってきたら―辞書の使い方 ケース カバー 装丁 | 三省堂 WORD-WISE WEB -Dictionaries & Beyond-より


三省堂国語辞典の編纂者でもある飯間浩明さんが述べられているのとほぼ同意見。辞書はすぐ使える状態になっていることが重要なので、辞書の箱、ビニールカバー共に処分。特にビニールのカバーは、有る無しでストレスが全く違います。表紙についたヨゴレが気になる頃には、小口側はもっと汚いので気にしていません。


余談ですが、私が学生の頃には新品の辞書を「使いこなした風にする儀式」をよくやりました。これは、ページを破れない程度にクシャクシャっと丸めて折り目をつけると、複数ページが一度にめくれる心配もなくなり、辞書が引きやすくなるというもの。現在でもたまにやることがありますが、最近の辞書は使われる紙の質が上がったのか、気がつくとクシャクシャ跡がなくなっています。手間を考えるとあまりオススメできない使用法なのかも...

辞書をどこに置くのか

ワンルームに住む学生にとっては、どこに置くも何も、置く部屋は1つしかないのですから、問題になりません。勉強机の前か横の、0.5秒で手に取れる場所にスタンバイさせておくのが理想です。外箱は取っておきます。
(中略)

辞書は、戸棚なんかには入れないほうがいいのです。何か調べたいことばがあったとき、戸棚の前まで歩いて行って、扉を開け、辞書を手に取り、外箱を外し、ページを開くという動作を経なければならないのは、面倒くさすぎます。いきおい、「まあ、調べるのはやめておこう」となってしまいます。

第26回 国語辞典をどこに置くか?―辞書の使い方 辞書の置き場所 | 三省堂 WORD-WISE WEB -Dictionaries & Beyond-より


机の上での使用であれば、できれば辞書は寝かせて(横にして)置いて、すぐに使えるようにしておきたいもの(机は以前エントリーしたこの辺りを その一その二)。ただ、スペースの関係で何冊もというわけにはいかないので、まず手に取る一冊を置いています。持ち運び用途ではないので、机上版があればそちらを購入。


机の横には、辞書専用の小さめの本棚を置いて20冊前後を移動せずに手に取れるようにしています。ポイントは、「辞書の後ろに辞書を置かない」こと。なので、奥行きのある本棚は必要なし。背表紙が確認できるよう普通に並べておきます。重量的にも余裕ができるので、棚板の心配も不要。入りきらないものは枕元や職場などへ。


辞書の内容に関してはそれぞれあると思いますが、意味を定義しているものではないと考えているので、できるだけ複数の辞書を参照するように心がけています。年代の経過もあるので、同じ名前の辞書でもなるべく新しいものを普段使いに。古い版を捨てないのは同じ辞書で引き比べると違った発見があったりするからです。

メリット、デメリットはあるが

先日ふと訪れた書店で、新学期用に辞書コーナーが大々的に展開されており、普段は目にすることがないような辞書まで置いてありました。私自身はとても興味深くチェックしていましたが、周りに目を向けると年配の方が目立ちました。私もスマホ用の辞書アプリは導入していますし、その便利さに関してはやはり紙よりも勝っていると思います。


今回は個別の辞書の特徴を挙げるのは割愛しましたが、辞書の冒頭には編者による想いや出版の意図も書いてあります。まだまだ紙の辞書の全てがアプリやオンラインで利用できるようにはなっていませんし、書店や図書館などで確認してみると多種多様で面白いと想います。